大井川通信

大井川あたりの事ども

鳥の声とともに(2019バージョン)

今年も、視覚の障害のある子どもたちに、実際の音源を使って、鳥の声の聞き分け方の話をした。身近な鳥で、今の季節に戸外で聞くことができるもの、鳥の暮らしや人間とのかかわりの多様さがわかるものを選びたい。昨年より少しバージョンアップ。

まず、キジバトで、公園のカワラバトとの違い、次にカラスで、ハシボソとハシブトの鳴き方の違いを話す。同じように見える鳥にも、種類があるのだ。

次に、トビ。カラスにも追われる弱いタカで、「トンビがタカを生む」「トンビに油揚げをさらわれる」とか、ことわざになるほど、人間の生活とのかかわりがある。

ウグイスでは、ホーホケキョ以外にも、谷渡りと呼ばれる激しい鳴き方があること。ホトトギスは、今の時期海を渡ってやってきて、ウグイスに托卵して子育てしてもらうこと。今年の初音は例年より遅く、6月2日だった。

複雑なさえずりを楽しめる鳥でも、ホオジロは林の周辺、ヒバリは田畑と住む場所が違う。最近のアイドルで「美空ひばり」とかいたよね、と子どもにはわかりにくいボケを言って見事にすべる。

大声で鳴くコジュケイと、一日中鳴きまくるガビチョウは、人間が外国から連れてきた鳥だ。最後に番外編で、松林のハルゼミの声を聞いてもらう。

あとから視覚障害者教育の専門の先生が来たので、この自分の試みや鳥をめぐる持論をついつい熱心に語ってしまうと、意外なことに、先生はフムフムと耳を傾けてくれる。

あとから先生の経歴を見て、その理由がわかった。韓国で生まれ、病気で弱視になり、日本語を独学し、日本の盲学校でしんきゅうの国家資格取得後、夢だった大学に進学。心理学の研究者の道をあきらめて民間企業に就職するが、一念発起して障害学で博士号を取得。

おそらく先生は、暮らしの中で立ち上がる「問い」やその実践について、理解をもっているのだろう。