大井川通信

大井川あたりの事ども

クマバチの意志

近所のため池で、クマバチを見かける。秋に見ることは珍しいような気がして、図鑑で調べると、それそろ活動期間の終わりの時期だった。

昔図鑑で見るクマバチの姿は、大型のハチにしてはまるっこくて胸の黄色と黒いおしりもかわいらしく、いかにも狂暴そうなスズメバチと違って好きだった。ただし実物を見る機会はそれほど多くはなかったのかもしれない。我が家には、藤見を楽しむという習慣がなかったのだ。転居して、藤の花を見るようになると、いつもそこにクマバチがいるのが気になった。ミツバチの仲間だから刺さないという知識だけはもっていたが、やはり少しは怖かった。ところが藤の花は、クマバチでないと花粉の媒介ができない構造だそうだから、実は手入れに不可欠の職人さんみたいなものだったのだ。

大井村の賢人原田さんが、朝晩幼稚園に手伝いに行っていて、原っぱで駐車場の誘導をしている。そこを住処とするクマバチがいるらしく、縄張りにはいってくる他のハチやときにはツバメさえ追い回す姿に、「意志のかたまり」と評して感嘆していたのを思い出した。今回調べてみると、実は排撃のためではなく、クマバチのメスかどうかを確認するために、つまり求愛のために、あらゆる飛ぶものを追い掛け回すらしい。それもまた、一つの意志であることにはかわりないか。