大井川通信

大井川あたりの事ども

コラムシフトの快楽

自宅の駐車場で車の車体をこすってしまい、修理工場の代車にしばらく乗ることになった。トヨタの何とかという車で、おそらくミニバンという車種の小さいものだろう。車内の空間が広々としていて、車高が高くのりやすい。

シフトレバーの位置が、運転席の隣のフロアになく、ハンドルの後ろ側(ステアリングコラム)につけられている。発進や停車、バックの時など、AT車でもシフトレバーを操作する機会は多いから、この位置によって、運転の感覚ががらりと変わる。

手元の方が操作性が高いし、細長いレバーをてこの原理でガチャガチャと動かす感じが、いかにも機械ものを操作しているようで楽しい。

子どもの頃は、男の子なら人気の職業は、バスの運転手さんだった。運転席近くに座って、運転手さんの動作を見るのが好きだったが、当時のバスはマニュアル車で、コラムシフトのレバーだったと思う。長いシフトレバーを、左手で自由自在にあつかう姿がかっこよかった。

ミニバンのコラムシフトを操作しながら、まるでバスを運転しているような気持ちになる。車高も高く視界も良好。それだけで代車の一週間は幸せだった。通勤だけでなく、休日には買い物や遠方のドライブにも使った。結局、車の名前も知らないままに別れてしまったけれども。

ネットで調べると、近ごろは、ミニバンでもコラムシフトは激減しているそうだ。フロアシフトもコラムシフトも、どちらもギアチェンジを機械的にマニュアルで行うためのものだった。しかし今は車の電子制御化がすすんでいるから、シフトポジションをインパネ上のボタンやスイッチで選択することができる。

なるほど。修理代の出費は痛かったけれど、コラムシフト車の操作は貴重な経験だったわけだ。それで良しとしよう。