大井川通信

大井川あたりの事ども

凋落する日本

今さらながら、タイトルの件について。

僕が小学校時代の子供向けの自動車の本に、日本の自動車生産台数が世界7位であると書かれていたのを覚えている。その後高度成長期からオイルショック以降の安定成長を経て、日本の自動車生産台数が世界一位となり、経済の規模もアメリカに次ぐ二位となった。冷戦終焉とバブル崩壊を経て、失われた10年が経過して21世紀となっても、まだまだ日本は大丈夫という希望的観測(誤情報)が主流だったと思う。

僕などにもこの10年、いや5年くらい前から、肌感覚として日本経済の凋落が実感できるようになった。経済規模で中国に抜かれるのは仕方がない。しかし近年、ドイツにも抜き返されている。賃金水準は韓国に抜かれて、先進国では下位に位置するようになった。

かつて経済大国をおう歌していたころ、今の暮らしの豊かさは、発展途上国の低賃金等の犠牲の上に成り立っているという議論があった。フィリピンのバナナや、中国の雑貨や衣類が例に挙げられた。もちろんある程度その構造も残っているだろう。

ところが今、僕など庶民の貧しいなりに快適な生活を支えているのは、コンビニや牛丼屋、お弁当屋などのチェーン店である。ネット情報をみると、この身近な労働現場での低賃金等、労働環境のひどさが暴かれている。とても長期的に労働力の再生産(結婚して子育てする)ができる労働条件ではないのだ。これは外食チェーン店だけでなく、日常を支えるあらゆる分野に及んでいるだろう。

格差は遠い他国に転嫁されているだけではなく、むしろ目の前で使い捨て労働の格差が歴然と展開されている。見えない格差ではなく、見える格差が放置されており、仕組みとして社会全体の再生産が不可能な事態に陥っているのだ。

おそらくここから回復するためには、言葉の上だけでなく本当に「異次元」の少子化対策なり労働環境の改善なりが必要なのだろうが、30年放置してきた課題を、今さら「異次元」のレベルで対処するだけの体力と知力をこの社会が持ち合わせていると考える方が無理があるだろう。