午後5時15分に父親が自転車にのって帰宅する、その1時間10分前、子どもたちが家のテレビに我が物顔に群がっている時刻。
その時テレビから鳴り響いていたのが、「4時5分 ♪ 4時5分 ♪」の軽快なメロディーだった。「楽しくテレビを見るために~ 楽しくラジオを聴くために~ 覚えておくと便利です~ ♪」という風に歌詞は続く。
よほどたくさん聞いたのだろう、このメロディーと歌詞が頭にこびりついて離れない。ただ、いったい何の曲で、何を目的にした番組だったのか、今ではまるで見当がつかなかくなっている。
ネットで検索すると、NHK総合の『受信相談』という5分間番組のテーマソングだったようだ。今ならパソコンやネットの利用で相談コーナーや窓口が必要だけれども、当時はテレビやラジオが最新の情報機器でまだまだ技術的にも不安定なときだったのだろう。だからこんな受信にかかわるノウハウや豆知識の番組に需要があったのだ。
ただし不思議なのは、子どもの僕がなんでこんな番組を視聴する機会があったかである。午後4時代といえば、民放の1時間ドラマの再放送枠で、NHKなど見ている暇はなかったはずだ。
水戸黄門や花山大吉などの時代劇、森田健作などの青春もの、石立鉄生のホームドラマ、太陽に吠えろ等の刑事ドラマ、細腕繁盛記なんて長尺のドラマもあったな。
ただ当時はリモコンなんて便利なものはないから、NHKをつけたままで4時を過ぎてしまうことがよくあったかもしれない。だとしたら、この「4時5分」のメロディーが鳴り出してようやく目当ての番組にチャンネルを変えたのだろう。それでも主題歌を聞き逃すくらいで番組には十分間に合ったはずだ。
「テレビもラジオもいつでもOK、受信相談、4時5分」
この曲の後半の歌詞はこうだったそうだが、不思議とほとんど覚えていないのは、曲の途中でチャンネルを変えていた証拠なのかもしれない。