大井川通信

大井川あたりの事ども

どぶ板を踏む/沈下橋を渡る

今の職場の昼休みの散歩コースはバラエティに富んでいる。しばらく、裏の丘陵の中や周囲の自然の多い道を歩いていた。大きな岩をまつった神社や、古墳が森の中に出現したりして、変化あり起伏ありで面白い。人にも会わないから、大声で詩など暗唱して歩いていた。

近ごろ反対側の街中を歩いてみたが、じきに大きな河川にでる。その向こう側には古くからの繁華街があってスナックが軒を連ねた路地がある。住宅と住宅との間の側溝の上を歩ける小道があって、そこに各家の裏口が面している。

文字通り「溝(どぶ)板を踏む」経験をして、なるほど、どぶ板選挙とかどぶ板営業とかは、こんな路地に入り込んで、一軒一軒裏口の戸を叩くのだろうと実感できた。

帰りは、大きな橋を使わず、広い河川敷を歩いて、そこに渡された簡素な沈下橋(ちんかばし)を渡る。水かさが増した時は、流れの下に沈んでしまうため、欄干も親柱もないコンクリートの丈夫な一枚板でできた橋だ。

急流の四万十川などでの生活用の橋というイメージであこがれていたが、河川敷の中州に渡るために架けられているのは意外だった。

昼休みのわずか30分くらいの散歩で、味わえる物事のふり幅はとんでもなく広い。