大井川通信

大井川あたりの事ども

『日本建築集中講義』 藤森照信・山口晃 2021 

建築学者と画家による、日本各地の有名建築の訪問記。もとは雑誌連載されたもので、両者の会話とともに、直筆のアンケートやマンガなどが載せられていて、素人にも読みやすく構成されている。

13の訪問先の内、実際に僕が見たことがあるのは、「法隆寺」「投入堂」「松本城」「西本願寺」の四つだけで、かつて路上観察学会を立ち上げた藤森氏らしく紹介される建物はヴァラエティに富んでいる。実質は、藤森氏による自由で気楽な講義といった感じの内容だが、いくつも面白い指摘があった。

住宅は「そういうもんだ」の無意識の世界だから、変わらない。神社や寺院などの宗教建築は「こうあるべきだ」の世界だから、時代にあわせてどんどん変わる。

城は、日本建築史の突然変異で、伝統的な素材美や「垂直と水平の美学」とかは天守閣には全くなく、ヘンな建物。

花頭窓(かとうまど)は日本建築の中でもっとも変わった謎の造形。

二人は専門家だから、もちろんその専門性はあるのだが、訪問のドキュメンタリーとも呼ぶべきこの本を読むと、実際の目のつけどころはかなり部分的で自由であり、ある意味いい加減で目線が低いことに気づく。ガイドの人となりを楽しんだりもしているのだ。

建築は肩ひじ張らずに、こんなふうに楽しめばいいのだと思わせてくれる。自分がピンときたところに感覚を集中させて、驚いたり喜んだり考えたりすれがいいのだと。