大井川通信

大井川あたりの事ども

蔵書の話

今月は土日が埋まっているので、吉田さんとの例月の会を休日の日中に開くことができない。たまたま今日吉田さんに連絡をとると、午後から空いている時間があるというので、引っ越し祝いを兼ねて、新しいアパートを訪ねることにした。

吉田さんは大阪の事務所を引き上げて、この土地に来てから、4つ目の拠点となる。短期間で引っ越しを繰り返したのは、人の紹介や好意で入居したからで、その人の事情で退去もせざるを得なくなる。今回は正式な契約だから、少しじっくり時間をかけて準備と整理をしたうえで、次には最終的な拠点を探したいという。

アパートの三室とリビングは、吉田さんの蔵書や映像関係の資料でほぼ埋まっている。文字通り足の踏み場を見つけるのが難しい。蔵書でいうと、吉田さんは、購入した本は必ずその時に読んでしまうそうだ。読んでいない本を持っていることが許せないらしい。そうやって読んだ本は、たとえ内容が悪くとも資料として捨てることはない。

積読が中心で、むしろ読むことがまれで、気に入らない本を捨てることに抵抗のない僕とはまるで違う。蔵書に対する向き合い方の違いは、おそらく知性の構造にも大きな差異を生み出しているだろう。それだからこそ、吉田さんとの対話は刺激的で面白い。

僕は、今後の進路に変更が生じたことや、身の処し方についての考えを話す。1月の読書会報告予定の話をすると、僕がたどたどしく説明するベンヤミンの「歴史」や「星座」の概念を、すらすらと理解してくれる。そしてそれを、自分の考えや活動に即座に応用してみせる。

レジュメも何もなかったけれども、吉田さんと会って話すなら、それが中身の濃い勉強会となる。得難い友人だ。