大井川通信

大井川あたりの事ども

八重洲ブックセンターの閉店

八重洲ブックセンターが先月末で閉店したそうだ。1978年の開業というから、僕が高校二年生の時だ。それまで大型書店と言えば、新宿の紀伊國屋書店だった。5階建てくらいあったけれども、通り抜けできる構造のワンフロアは細長くて狭かった。

それに比べて、八重洲ブックセンターはフロアも広く、いろいろな専門書も十分にそろっていた。何より、東京の八重洲口の斜め前という立地がわかりやすく、学生の頃もよく言ったし、九州に来てからも、帰省のたびに顔を出すことも多かったと思う。

ただ、博多にジュンク堂ができると、八重洲ブックセンターより一回り大きかったから、わざわざ寄る機会は減ったような気がする。池袋のジュンク堂本店はさらに大きかったが、僕には、福岡のジュンク堂で十分だった。

コロナ禍がピークを過ぎて、昨年7月に久しぶりに東京に帰省したときに、一番に八重洲ブックセンターに寄ったのは、虫の知らせだったのだろうか。

書店で日本地図を買い、二階のカフェで広げて、旅客機の窓から見下ろした国土に線を引いたのだ。その日本全図が、八重洲ブックセンターでの僕の最後の買い物になった。

再開発されたビルでいずれ新店舗の営業を再開するというが、この時代、売り場面積は減少するだろうし、ビル一棟が書店という魅力に代替することはできないだろう。これは、同じく再開発で閉店してしまった福岡のジュンク堂にもいえる。

45年の歴史の最初から最後まで見届けることができたのは、自分がずいぶん年をとってしまったことの証拠だけれども、これもありがたいと思うべきなのだろう。

 

※この記事を書いてから、神田にあったビル一棟まるごとの大型書店「三省堂神保町本店」も、1981年開業から40年の歴史を終えて、昨年5月に閉店したことを知った。こちらは建て替えとのこと。