大井川通信

大井川あたりの事ども

『十二人の死にたい子どもたち』 冲方丁 2016

以下は読書会運営用メモ。盛大にネタバレ含む。

主宰を含めて12人の少年少女が、ネット上の審査を経て、集団での安楽死を実行するために廃病院に集まる。当日は、抜けるのは自由だが実行者全員一致での進行が条件。予期せぬ出来事によって議論が紛糾し、結果的に全員一致で実施しないと決定する。

 

【プロフィール】

1 サトシ 父の自死で、死に取りつかれる。父の旧病院で会を冷静に主宰。

2 ケンイチ 空気をよめない発言でいじめ受ける。

3 ミツエ ゴシック衣装。タレントの後追い。

4 リョウコ 帽子マスクの地味衣装。芸能人。タバコ。本当の自分探し。

5 シンジロウ ハンチング帽。不治の病に苦しむ。親警察で思考好き。

6 メイコ 保険金目的。屈折した父への復讐。厄介者の排除でノブオ階段落とす。

7 アンリ 黒髪黒服の仕切屋。母梅毒で薬物中毒。生まれない権利主張。

8 タカヒロ 吃音で寝不足。母からの薬漬け疑惑。

9 ノブオ いじめっ子を突き落とした経験。告白衝動。

10 セイゴ 大柄でタバコ。母から虐待され生命保険。受取不可をねらう。

11 マイ 金髪制服。天然。援助交際?でヘルペスもらう。

12 ユキ 小柄で無口。兄妹で交通事故の後遺症に苦しむ。

 

【予期せぬ出来事の内実】

・ユキが、意識のない車椅子の兄を予告なく追加メンバーにしようとする。それに気づいたアンリとノブオが、会が中止にならないように(根拠弱い)、密かに会場に連れ込んだこと。

・ノブオを邪魔者認定してメイコが階段から突き落としたこと。

・推理(思考)に目覚めたシンジロウが人望を集めて中止を提案したこと。一方決行論者のアンリは人望がなかったこと。

・サトシが命をたとうとする子どもたちと接する(会話をする)ことにひかれ会を運営するが、それが結果的に思いとどまる結果にいたること。

 

【読書会の課題案】

1.この小説が映画化(もしくは舞台化)された場合に、演じてみたいメンバーは誰ですか。また演じたくないメンバーは誰ですか。それぞれ理由も教えてください。

※演じてみたい方 男:ノブオ。再登場時の見せ場あり。女:ミツエ。押し活魅力あり。演じたくない方 男:サトシ。正体不明で台詞多い。女:メイコ。複雑すぎる。

 

2.今までに参加した会議やグループの中で、当初の目的とは違った結論や結果になったものはありますか。あればそのエピソードを教えてください。

※亡くなった知人の遺稿集を作る目的の集まりで読書会をすることになった。

 

3.この小説は登場人物が多く、場面も複雑でしたが、こうした読みにくい本を読むために何か工夫した自分なりの方法があれば教えてください。全く他ジャンルの本を読む方法でも結構です。

※人物相関図。概念図をつくる。マーカー、ラインを引きまくり、付箋をつけまくる。

 

4.この本の感想を教えてください。

※子ども達同士で話し合うことで、人として生きる力や意欲を回復する、という構想はとてもいいと思う。主宰者が、出会い話し合うことの効果を学んで、実はそれを繰り返し用いているというオチも悪くなかった。ただ12人という設定にこだわったため、やや全体が冗長であり、ミステリー仕立てにするための予期せぬ出来事の設定には無理があったと思う。明確な悪意をもった人間がいないなかで、いわば善意と無意識の組み合わせでこうした「謎」が生まれる可能性はとても低いだろう。そのため謎解きの快感や達成感もほとんど感じられなかった。