女優の何某さんといっしょにカフェに入る。緊張している僕に、思ったことをそのまま口にして会話したらいいとアドバイスしてくれるが、両隣に、サラリーマン風の客と友達同士の女性客がいたので、結局何も話せなかった。
彼女の知り合いも店に来てしまったので、外で待っていればいいと思って、悪いけれど黙って一人で店をでた。外の広場では、大勢の人が集まっている。映画のロケをしているようだった。
どうやら見物客自体がエキストラみたいなのだが、とても背の低い人たちがしかも身長順に並んでいるので、そこに入ったらかがまないと頭が飛び出してしまう。これも映画作りの美意識なのかと思ったが、奇妙なこだわりに思えた。
やがて、主演男優らしき若い男が聴衆の中で歌を歌いだした。スザキという役者で、立川のスザキ町あたりの出身だということも僕は知っていた。歌が終わってロケは終了。役者が最後に、気持ちよかったみたいな感想を言って、感謝の言葉がないのが引っかかった。
広場で先ほどの女優とまた顔を合わせる。二人で、僕の実家に寄ったが、あまり愛想のない母親がいたと思う。そのあと、彼女のマンションのあるスザキ町まで送ることになった。そこに住んでいる理由が、好きなラーメン屋が近くにあるからというのがおかしかった。
