大井川通信

大井川あたりの事ども

渦巻けるカラスの群れ

先日、今年初めて、ミヤマガラスの群れを見た。かつて塩田のあった開けた農耕地を走る県道で、道路わきの電線にカラスがずらっと並んで止まり、田畑にも散らばってエサをあさっている。ただしミヤマガラスにしては小さな群れで、大群になると、カラスがぎっしり詰まった電線が延々続くような異様な光景になる。通称千羽ガラスと呼んでいるが、ミヤマガラスは大陸からの渡り鳥だから、主に日本海側の冬の風物詩だ。東京では見たことはなかった。

もししばらく彼らを観察する余裕があれば、群れの面白い習性を見ることができるだろう。カラスたちは、まず上に向かって次々に飛び立っていく。ぐんぐん高度を上げて、小さな粒の集まりになった群れは、上空で渦を巻くように大きな円を描いて飛びながら、ゆっくり移動する。そして少し離れた場所に次々と舞い降りて、また電線で羽を休めたり、農耕地でエサをあさったりするのだ。

昔、文学史の勉強で『渦巻ける烏の群』というプロレタリア文学の作品の名前を覚えた。作者黒島伝治がシベリヤ出征時の体験を材料とした小説ということだから、まちがいなくミヤマガラス(それも夏の大陸での姿)が描かれているのだろう。もし作者が日本でこの奇妙なカラスを見たことがないなら、強く印象に残って、小説の表題にしたのも無理はないことだと思う。