大井川通信

大井川あたりの事ども

ガチャガチャとガチャポン

ガチャガチャの新聞記事を読んで、子どもの頃のことを思い出した。初めて出会ったガチャガチャは、近所の商店の前に置いてあった10円のガチャガチャだった。10円だから、ビニール製の小さな車や人形や玩具など、たいしたものは出なかったと思う。それでも、物持ちのあまりよくない僕が、当時のガチャガチャの景品のいくつかをまだ大切に保管しているところをみると、けっこう思い入れがあったのだろう。

今から15年前の現代美術のワークショップで、思い出のものを持参してそれを絵と文にして語り合う、という企画に参加した。その時持って行ったのが、10円のガチャガチャのお気に入りの景品だった。

ガチャガチャのカプセルの中には、銀色の帽子と銀色の靴が入っているだけだ。それをカプセルの上下の穴に突き刺すと、カプセルが胴体の人形が完成する。カプセルにはあらかじめ横長の顔のシールが貼ってあるのだ。その表情がなんとも古臭いタッチで描かれているのが、またいい。珍妙で斬新な発想だと思う。

ガチャガチャは、その後100円が主流となり、いつのまにか「ガチャポン」と呼ばれるようになったと記憶している。ガチャガチャ派だった僕は、少し不本意で、肩身の狭い思いをしていた。ところが今では、今回の新聞記事もそうだけれども、ガチャガチャという呼び名が息を吹き返し、主流になっているようだ。

50年という時の経過は、どんな分野のものにも栄枯盛衰をもたらすのだろう。