大井川通信

大井川あたりの事ども

『新型コロナワクチン 本当の「真実」』 宮坂昌之 2021

8月に出版されたばかりの、免疫学者による最新の新型コロナウィルスとワクチンの解説書。題名は暴露本みたいだが、読むとおのずから、信頼できる専門家による信頼できる著作であることがわかる。

僕は自分の新型コロナウィルス感染症の治療を契機として、もっと人間の身体全般について目を離さずに生きていく方向にシフトチェンジしたいと思った。自分が体験したウィルス感染と治療、そして打ったばかりのワクチンについては、野次馬的にではなく文字通り当事者として理解したいと思っているのだ。

堅実な専門知識と最新の情報に基づく内容だけに簡単に理解を寄せ付けないところがあるが、免疫の仕組みの基礎からの解説もあって、事態のアウトラインを頭に入れることができた。

ワクチンというと、漠然と病原体本体を材料にするものとばかり思っていたが、新型コロナウイルスのワクチンは、遺伝子工学に基づく全く新しいタイプのワクチンだ。新型コロナウィルスの遺伝情報(全ゲノム配列)は解読されており、そのうち必要な一部の遺伝情報を伝えるワクチンを体内に送り込む。ここでのプロセスは複雑だが、それによってウィルスの疑似的な侵入を認識させて、体内の免疫反応を活性化させるというものだ。

ウィルス本体でなくその設計図の一部を使うだけで、免疫反応を誘うとすぐにその設計情報の痕跡は消えてしまうから、基本的に後遺症等の心配がないということになる。

そもそも遺伝子工学自体が、どこか信用できずいかがわしいという直感はきっと間違っていないと思う。しかし、実際にこれだけワクチンの効果が実証されていて、あきらかに感染の波を食い止めている現状がある以上、そしてその効果のメカニズムが一通り納得のいく形で説明されている以上、接種以外の選択肢はないだろう。実際に生死の境をさまよった人間としてそう思う。

あれだけ苦労した自然感染による免疫よりも、ワクチンで強く安定した免疫が得られるというのはちょっと残念な気がするが、あの苦しい体験を活かすためにも、ワクチン接種で免疫を最強のものにしておきたい。

終末には、ファイザー製ワクチンの2回目の接種がある。この本のおかげで、初回よりも不安なく受けることができそうだ。