大井川通信

大井川あたりの事ども

『ライスシャワー物語』 柴田哲孝 1998

昨年末に再刊された文庫で読む。おそらく人気ゲームのキャラとして注目を浴びたことによる再刊だろう。しかし、競馬に目覚めて4カ月目の僕には、競馬に関する様々な知識をまとめて理解するのに格好のドキュメンタリーだった。

学生時代から競馬をしているような人と話してみても、彼らの競馬に関する知識に穴があることに気づいた。

この手の閉ざされた領域の知識というものは、ふつう、先達(親とか先輩とか)に教えられて、その人たちのしぐさやコトバを通じて学んでいくものだと思う。そこで実践知が積み重ねられていくとしても、体系的に知識を習得するような機会はない。

ところが今の時代はネットの動画がある。僕はこの三か月で、新旧の競馬中継を含むいろいろな場面と、様々な専門家による競馬論についての動画を見ることができた。その中でたくさんの専門用語と業界の内部知識を浴びるように吸収してきた。

もとより体系的ではないけれども、なにしろ動画の量が多いから、いろいろな情報がつながったり、そのつながりを推理し補足することでスキマが埋まっていく。これが面白い。

この本では、ライスシャワーという馬の誕生からの出来事が時系列で描かれており、読みながら、競馬にまつわる僕の雑駁な知識を総動員し、確かめなおすことに役だった。

ちなみに、ライスシャワーが活躍したのは、1992年から1995年にかけて。ちょうど僕が結婚して長男が生まれたあたりの時代だ。その頃競馬には全く関心はなかったけれど、馬たちは変わらず一生懸命走っていたのだなと思うと感慨深い。