大井川通信

大井川あたりの事ども

競馬の本

昨秋に馬と出会ってからは、競馬関係の本はずいぶん買った。まず「本」から入るタイプなのだ。より正確には「積読」から入るタイプだから、買った本は拾い読みしたくらいで、読み通したものはない。

もともと好きな寺山修司の競馬の本も古書で何冊かあさったが、それすら読んでいない。手軽な新書のシリーズには、有名調教師の書いた本もあって、斜め読みしたことはある。

今回、今年引退した藤沢和雄元調教師が『これから競馬の話をしよう』という本を出したので、さらさらと読み通してみた。口述筆記で分量も少なかったが、競走馬にとって「血統」がいかに大切なものなのかは、腑に落ちた気がする。

馬を生産したり、育ててレースに出す立場でも、一頭の馬の活躍よりも、たくさんの馬の活躍をもたらすエネルギー源(種馬)を生み出すことの方が重要になる。

それぞれの馬が活躍できるのはせいぜい数年だ。応援する側にとっても、背景にある血統を意識することで、より深く競走馬のことを知ることができるだろう。

藤沢厩舎といえば、グランアレグリアだ。僕がレースを見始めたのは、昨年の天皇賞秋からで、そこで3着に敗れたグランアレグリアは、二週間後のマイルチャンピオンシップでは雪辱して勝利し引退の花道を飾った。生まれて初めて応援したお馬さんだから、思い入れがある。

秋の競馬シーズンが始まって、僕にとって毎週末のレースが楽しみな日々が続くことになる。この楽しみを今までの人生を過ごしてきたのは残念だが、今になって気づいて本当にラッキーだったとも思える。

ただこの1年で結局馬券は一枚も買わなかった。見始めたころは、試しにいずれ買ってみようという気はなくもなかった。ただ競馬の予想動画を楽しみで見るうちに、専門家にとっても予想がどれほど難しいかを知ってしまったので、貧乏性の僕が馬券に手を出すことはこの先ないだろう。