大井川通信

大井川あたりの事ども

美術

ある美術家の生涯

ある美術家の回顧展を公立美術館に観に行く。 1960年代末には、既存の表現や制度を「粉砕」して、グループで「ハプニング」と称する過激な実践を繰り返すが、逮捕され、孤立する。この時代は、ビラやポスターや写真等の資料展示で、いわゆる作品はない。 1…

「まつのひと」 鈴木淳 2018(第13回津屋崎現代美術展)

旧玉乃井旅館での現代美術展を、黄金週間で帰省中の長男とのぞいてみる。駆け足で観るなかで、鈴木淳さんの作品が心をとらえた。 鈴木さんは以前、神社を舞台にしたプロジェクトで、石柱などに刻まれた寄進者の名前から、その人のことを調べて、その場に掲示…

中村宏の「天国と地獄」

たまった新聞をめくっていたら、いきなり中村宏の名前と見慣れたタッチの絵が目に飛び込んできて、驚いた。本当に久しぶりに彼の画集を開いたばかりの時だったので。まさか、こんな形で彼の具象画の新作を見ることができるとは思わなかった。少していねいに…

ヴラマンクの落日

20年ばかり前、松岡美術館の収蔵品によるフランス絵画展で、ヴラマンク(1876-1958)の絵を何枚か見た。その中に、とても気に入った一枚があった。夕闇が迫る林のむこうで、赤い太陽が沈みかけている。夕陽はかろうじて林の中にも届き、うねうねと伸びる木…

ターナーの水鳥

知り合いの教師からこんな話を聞いたことがある。大学の付属小学校に勤務していたとき、ベテラン教員から教えられた話だという。若いころ、一生懸命に準備して研究授業を行った。その講評の際、いきなり授業の中身でなく、校庭にどんな鳥が来ているか、と尋…

槻田アンデパンダンー私たちのスクラップ&ビルド展 2017

僕の住む町から遠くない工業都市では、古い木造の市場を見かけることができる。アーケードのかかった商店街ではなくて、入口には市場の名称を掲げた木造校舎みたいな大きな構えの建物の中に、細い路地のように通路が走り、いろいろな店が並んでいる。今のシ…

曜変

国宝曜変天目の再現にいどむ陶芸家の姿が忘れがたい。 テレビドキュメンタリーで、彼は、苦しくて仕方がない、とつぶやく。 それは、彼にとって作陶が目的でなく手段になってしまっているからだろう。完全な曜変の輝きを捕まえるための。