少し前のことになるが、とても温厚な上司に仕えていたことがある。当時、同僚に仲の良い冗談が通じる人がいたので、いろいろ冗談を言い合ってふざけていたが、その上司がタヌキに似ていることをネタにしたものがあった。
まじめでやさしい上司だったから、陰口や悪口でそんなことを言っていたわけではない。むしろ親しみをこめていたのだと思う。「今、ちらっとしっぽが見えたよね」とか、そんなたわいもないことだった。
上司が出張先でケガをした時には、「人間に化けているのがばれて、村人に叩かれたんじゃないか」と冗談めかしながらも、心配した。
ある時、上司が、とある講演会に出席することになった。その講演のテーマが、「人は化ける 組織も化ける」だ。これには、同僚と腹をかかえて笑った。
その上司は、残念ながら若くして亡くなったけれど、このエピソードは忘れられずにいた。気になってネットで検索すると、その時の講演者が同名の著書を書いていることを知った。僕はそのリーダーシップについての古書を注文した。
今では、僕もその上司が亡くなった年齢を超えている。本の内容を、少しは仕事に役立てることができるだろうか。
