大井川通信

大井川あたりの事ども

ノーベル賞と落葉掃き

ノーベル賞受賞の科学者の講演を聞いた。

かなりかみ砕いて研究成果を話してくれたのだが、やはり途中で振り切られて、理解が追い付かなくなった。ただ、生物の細胞の話をする中で、合成とともに分解が重要であるという指摘が面白かった。

ふつうはモノが作られていく過程ばかりが注目を浴びる。しかし一方で、作られたものが壊されていく過程がなければ、生物は生きていくことができない。たとえば、樹木だったら、秋になると、大量の葉から光合成の装置を分解して養分を幹に吸い取ってしまい、枯れ葉にして地面に落とす。この分解の作業があるから、樹々は毎年新しい葉を茂らせて、成長することができるのだ。

今日、職場のみんなで駐車場の落ち葉の清掃をした。この時期は、紅葉した庭木の枯れ葉がゴミになるのだ。ホウキで履いて、ビニール袋に入れるのだが、小さな塵取りはあまり役に立たない。人の手のひらほどもある大きな枯れ葉を両手ですくって、集める。一枚一枚の枯れ葉はカラカラに干からびていて、ほとんど重さが感じられず、つかんだらパリパリと砕けてしまいそうだ。栄養はまるで無さそうだけれど。

なるほど生命の痕跡をすっかり片づけて、幹の方に吸い取ってしまったあとの残りかすという説明が実感できた。毎年の紅葉や落葉だけれども、末端の部分のごく自然な劣化とか寿命みたいに受け取っていたから、思ってもみなかった。木々が巨大な吸血鬼だなんて。