大井川通信

大井川あたりの事ども

『お役人さま!』 廣中克彦 1995

当時、宮本政於の『お役所の掟』などの霞が関の内情を暴露する本が話題になったために、それに続く企画として、同じ講談社から出版された本だったと記憶する。ただし、こちらは都庁のノンキャリヤという、かなり下っ端の役人たちの生態を、「出入り業者」という立場から描いたものだ。

役人たちは、責任をとらず、ミスを認めず、出入り業者を都合よく使って、時には虫けらのように罵倒する。自分たちの利益に関することには敏感で、内向きの体裁づくりに熱心なため、都民というよりマスコミばかりを気にする。うんざりするような生態だ。

何より驚いたのが、著者が仕事を始めた1960年代は、業者による賄賂が当たり前だったという指摘だ。少なくともその頃までは、日本も最近の中国と同じような賄賂社会だったのだ。また、著者が一貫して味わうのが、木っ端役人における「官尊民卑」の思想というべきもの。しかし、これらはさすがに、今ではそのまま生き残ってはいないだろう。

本書が書かれた90年代半ばには、官官接待や旅費の不正支出問題など、公務員の世界の慣行が批判を浴び、ようやくそれらの改善に手が付けられた。それだけでなく、日本社会の様々な仕組みがいっせいに制度疲労を見せ始めた時代だった。四半世紀たってみると、やはりあの時期が、戦後の歴史の(おそらくはオイルショックに続く)大きな屈曲点だったと思い当たる。

 

ooigawa1212.hatenablog.com