大井川通信

大井川あたりの事ども

ゴマダラカミキリの命運

我が家のシンボルツリーたるケヤキ。これ以上大きくなっても困るし、害虫に喰いあらされて樹勢がおとろえるのを放置するのも忍びない。

そんなわけでゴマダラカミキリに対しても、以前のように寛容でいられなくなった。わずかに保存された近所の鎮守の杜の樹木だって、やられてしまうかもしれない。

先日、通勤路で見つけたゴマダラカミキリは、家からそこそこ離れていた場所だったにもかかわらず、道路わきの排水溝の鉄柵の中に落としてしまった。きっとおぼれ死んでしまったことだろう。

帰宅すると、妻がゴマダラカミキリを捕まえたという。ケヤキの害虫だから見逃さないように伝えてあったのだ。どうしようか。二晩放置したが、庭に伏せたかごの中でしっかり生きていた。

小柄な部類だが、見事な造形だ。ゴマダラカミキリは、日常みる甲虫のなかでは破格の美しさだと思う。特に、手足や腹の側が薄いブルーの色合いがある個体で、背の濃紺からのグラデーションがひときわきれいだ。ただ殺すのは忍びない。

僕は、住宅街の入り口にあるババウラ池まで歩いて、高台の公園から池を見下ろした。ここから投げて、後は運命にまかせよう。

弧を描いて投げ込まれた甲虫は、水面のはるか上で態勢を立て直すと、松林の方に向けて飛んで行った。やれやれ。お気に入りの黒松が食われたらいやだし、また家のケヤキに舞い戻ってしまうかもしれない。それでも彼は賭けに勝って、自分の運命を打開したのだ。僕も少しほっとしたような気分だった。

 

 

 

 

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