インフルエンザの稀な症状として幻覚があるそうだが、だとしたら、昼に見る幻覚でなくとも、夜に見る通常の夢の方にも何らかの影響があるのではないか。
丸4日近く療養で寝続けていたため、当然みる夢も多かったが、どれもとても鮮明で臨場感があり、細部が妙に生々しい。インフルエンザにより夢の世界が強化されたという実感がある。そのうちの特に印象の強かった夢。
僕は、とある句会に参加しようとしていた。メンバーは誰も知っている人はいなかったが、夢の中では何らかのつながりから参加したことになっているためか、とくに居づらさや気まずさはなかった。
集合場所は海の近くの砂浜みたいなところだった。句会の名前は「河童句会」。これには僕も混乱した。僕はリアルの世界で「河童読書会」という詩歌を読む読書会に何年も参加している。しかしその会のメンバーと、今回の句会のメンバーとで重なりはない。会の名称に「河童」をつけるのは流行かもしれない。そう納得した。
主宰の中年男は、緑色の服を着て、顔にも緑の縦じまのペイントを入れたうえに「ザンバラ髪」の河童頭だ。僕はおもわず質問する。「あなたは今日の句会のためにこんな扮装をしているのですか。それとも普段からいつもこの格好なのですか」
すると、会の顧問役だろう恰幅のいい年配の男が、ふだんから河童の姿かもしれないという発想がおもしろい、と相槌をいれる。
やがて句会が始まったが、よく見るとネットを通じての参加者も多いようで、女性グループなどが画面越しに陽気に自己紹介の挨拶をする。
僕ははじめての句会なので要領がつかめない。お題も一切なく、とりあえず思いついたものを発表すればよいそうだ。仕方ないので、「河童」でもって句を作ることにした。
最初に浮かんだのが、「水面に水音ぽちゃん河童の句」 しかしこれではあんまりだ。自分にもプライドというものがある。それで、「水底を探る姿や河童の句」などいくつかを思いついたが、目が覚めたあとも布団の中で句作を継続している自分に気づいた。