大井川通信

大井川あたりの事ども

蜷川

初戯曲のミニ芝居は、成功裡に終わった。勉強会の場所が、百年の歴史を持つ旧旅館で、虚構のネタに事欠かなかったから。年末のテレビで、蜷川幸雄も言ってたっけ。記憶を組織するのがよい芝居、と。

ゼロ記号

三人の勉強会用に、簡単な芝居の台本を書く。その場で実際に演じてから、演劇を論じ合う、という試み。日常の居室を舞台へと転轍するためには、意味を欠いたゼロ記号の配備が不可欠、と実感した。

なまず

今年で子育てが終わる。

夫婦で、昔子どもたちを遊具で遊ばせた公園を散歩してみる。

冬日が暖かい。

近くの神社まで足を伸ばすと、神様の前で、狛犬と一緒に石のナマズが向きあっていた。

埴谷

CDで埴谷雄高の洒脱な語りを聞く。

台湾での少年時代、空気銃でスズメを撃ち落とした経験が、自分の文学につながっている、と。

しかし、そのスズメは比喩であって、本物の他者でないようにも思える。鳥を眺めながら、ただ暮らしている者からすると。