大井川通信

大井川あたりの事ども

鳥たちと出会う瞬間

めまいはなんとかおさまったが、凍てつくような寒さである。無理に用事を作って、昼休み外にでる。用水路の脇の道を歩いていると、水路の擁壁の上で、セキレイが争っているのを見つけた。セキレイは、尾が長くスマートな小鳥で、ハクセキレイが地べたを歩く姿をよく見かける。しかし、今回は、カササギを小さくしたような黒白の優美なセグロセキレイと、胸の黄色が目立つキセキレイだ。彼らは気が荒く、縄張りのとりあいの最中だろう。

そこへ、一回り大きい鳥が割り込んでくる。よく見るとふっくらした灰色の身体に細かいウロコ模様が入っている。オスならば濃紺の身体に紅色の胸をもつイソヒヨドリの、とても地味な体色のメスだ。識別の難易度は高いかもしれないが、僕はほがらかにさえずるイソヒヨドリが好きな鳥なので、動きからそれとわかった。

不意に背後の林から小鳥の声が聞こえたので振り返ると、グレーの身体に黒いネクタイをしめたシジュウカラが、せわしなく枝で動き回っている。その近くにすうっと舞い降りたのが、細かいまだら模様のキツツキのコゲラだ。

5羽の鳥たちの交錯は、わずか数十秒の出来事だろう。それぞれは特に珍しい種類ではないが、彼らの偶然の邂逅に立ち会えたのはうれしかった。あたりまえの風景や日常のなかに、多様性や豊かさをみとめるのは、そんな瞬間をのがさない目なのだろう。帰り道には、すでに鳥たちの気配はなかった。