ミニカーのトミカが誕生して、今年で50年になるそうだ。その時発売されたラインナップのうち、トヨタ2000GTとファレデイZという二種類のスポーツカーのモデルを買った記憶があるので、小学3年生の僕は、トミカの誕生に立ち会ったことになる。
そのことが書いてあるかと思い、当時の日記をめくってみたが、トミカや車種の固有名詞は記入されていなかった。ただ戦闘機や戦車のプラモデルを買い、糸巻車などの工作を工夫し、「ファーブル昆虫記」や「風の又三郎」を読んでいた当時の日常のようすに引き込まれた。
谷保の田んぼでゲンゴロウをつかまえたのも、その年の夏だった。多宝塔のプラモデルを作っているから、寺院建築好きは当時からすでに始まっていたのだろう。あれこれと落ちつかなく手をだしているのは、今の自分とまったく変わらない。
トミカのミニカーは自分も集めたし、息子たちもずいぶんお世話になった。僕自身はいつかミニカーのモデルになる車に乗りたいと思ったけれど、不人気な大衆車を乗り継いできたから、その機会もなかった。その夢が実現したのは、50歳も過ぎてからのコンパクトカーでである。それでも愛車と同じトミカを手にして、格別な思いがあった。
子どもの夢や希望は、多くは忘れられてしまい、その大部分は実現されることはないけれども、その一部は歳月によって手に入れることができる。それはおそらく、これからの子どもたちにも変わらないことだろう。