大井川通信

大井川あたりの事ども

ミサゴの寒中ダイブ

強い海風が吹きすさぶ上空を悠然とミサゴが飛ぶ。風にのって旋回する姿は一見トビのようだが、羽ばたきはずっと力強い。ウミネコのようなしなやかな翼に短い胴をもつ白っぽいタカで、翼を開いた長さは大人の身長ほどもある。

広い河口には、次々に白い波が打ち寄せている。すると突然、ミサゴが翼をすぼめて、キリをもむように垂直に降下していく。あの高さから、しかも波立つ海面の下に魚の影を見つけたのだろうか? ミサゴはしぶきをあげて着水するものの、手ぶらのまま飛び立った。

再び上空を大きく旋回しながら、ミサゴは何回かダイブを試みる。ダイブにはいろんなパターンがあるようで、飛びながら浅い角度で飛び込むこともあれば、水面ぎりぎりであきらめて飛び去ってしまうこともある。いずれにしろ、成功の確率はさほど高くないようだ。ようやく大き目の魚を水中からつかみ取って飛び上がった。魚は空気抵抗を減らすためか、足を前後に開いて、戦闘機がミサイルを装着するように身体の下に抱えている。そのまま一目散に海岸にそって飛び去っていった。どこか安全な場所で食事にありつくつもりなのだろう。

サーファーも釣り人もいない冬の荒れた海を背景に、ミサゴのダイナミックな狩りを寒さに震えながら見物するのは、しかし最高の贅沢だ。