大井川通信

大井川あたりの事ども

木彫りの熊とホシフグとミサゴの海

流木をひろおうと思って、砂浜を歩いていると、一抱えもあるような木彫りの熊の置物が打ち上げられている。鼻のあたりは無残にもげていて。またしばらく歩くと、小さな丸々としたフグが落ちている。全身黒っぽいが、無数の白い斑点が並んでいてきれいだ。あとで図鑑で調べると、ホシフグだとわかった。

この時期は、海風も冷たい。海もかなり荒れて、波も高い。ふと見ると、砂浜近くを、ミサゴが飛んでいる。通り過ぎるだけかと思ってみていると、この付近に獲物の魚がいるらしく、行ったり来たりしながら、この場所を離れない。

夏なら子どもたちが海水浴をしているあたりで、水深は一メートル程度だろう。ミサゴは上空でひらりと姿勢を変えて、肩をすぼめるように両方の翼を寄せると、垂直にダイブして、水面に姿を消す。しかし、再び飛び上がった両足には、獲物がつかまれていない。水温も冷たいはずだ。ぶるっと水滴を払ってから、旋回したりホバリングで空中に止まったりして、はるか上空から獲物をねらう。

青空をバックに、白い波がしらが立つ海で躍動する、しなやかな白い鷹の姿は美しい。大げさでなく、世界一美しい生き物ではないかという思いと、それを間近に見ているという喜びがわいてくる。

ミサゴは、6回目のダイブでようやく海中から獲物をつかみ取った。小ぶりの魚のようだったが、満足したのだろう、海岸沿いを山の方に帰っていく。向かい風のはずなのに、大きく羽を広げたまま、ゆっくりと前に進んでいくのが不思議だった。