大井川通信

大井川あたりの事ども

セミとクワガタの話

久しぶりに会った知人を、鉄板ネタでもてなす。

まず、セミの幼虫はなんで長期間地面の下にいるのか。まずはクマゼミアブラゼミとの地中での年数の違いや、カブトムシはどうなのかという伏線をはり、僕の家の庭で毎年ひろえる抜け殻の数から、地中の状態をイメージしてもらう。

セミの幼虫が多すぎて木が枯れたという話を聞きますか」という問いを経て、セミの幼虫が木の根から養分ではなく、水分しか摂らずに、その中にわずかに含まれるアミノ酸を摂取しながらゆっくり育ち、樹木と共生している、という驚くべき結論に持ち込む。

すると彼は、感心したような顔をしながらも、それなら気になるところがあるという。道管(水分の通り道)は師管(栄養分の通り道)より内側にあるから、セミの幼虫はどうやってそれを探り当てるのだろうと。僕は、セミは成虫でも長い針のような口を樹皮に突き刺しているから、幼虫でも道管に届く口を持っているのではないか、ととっさに切り返す。

なかなかできるなと思いながら、それではとクワガタの話題に転じる。ミヤマクワガタノコギリクワガタとどちらが強いかという問題だ。

虫好きの彼は、体験的にノコギリが強いという正解を答える。僕は、ミヤマの方が喧嘩で相手をはさむ技が少ないという研究書で知った事実をドヤ顔で伝える。すると知人は、クワガタの顎を指先で広げてみた時の感触から、はさむ力がノコギリの方が強かったという、新しい事実を口にしたのだ。

相手の話をよく聞いて、自分の体験や知識から新たな問いや発見を導き出す。彼は理科の先生だが、そのことを抜かしても、すぐれた教師なのだろうと納得した。