大井川通信

大井川あたりの事ども

高度成長時代の「原風景」

子どもの頃、初めて見た景色(原風景)は以前からずっとあったものだと思い込んでしまう。だから子供心に、本物の日本国総理大臣は佐藤栄作総理であり、本物の米大統領ニクソン大統領、プロ野球の優勝チームはいつまでも巨人軍であるという思い込みがあった。

最近、あの盤石に見えた立川のデパート群が、実は今の郊外型ショッピングモールと同程度の浅い歴史しか持っていないことに驚かされた。僕が立川でデパートを体験したのは1970年前後だが、多くのデパートが1960年代以降に建てられている。デパート群はできたてのほやほやだったのだ。今の地元の最新のイオンモールでさえ、もう10年の歴史は持っている。

たとえば、子どもの頃川遊びした多摩川は公害全盛期で洗剤の泡がブクブク浮いて汚れがひどかったが、東京の川とはそんなものだと思っていた。ところがそこまで汚染されたのは、せいぜいその数年前からのことだったと書物で知り驚かされた。

大人になって帰省すると、実家周辺の郊外はもちろん羽田空港からさえ富士山がきれいに見えることにびっくりするが、子どもの頃、富士山を地元で見た記憶はごくわずかしかない。当時は工場の煤煙や車の排気ガスで視界が効かなかったのだろうが、それも高度成長期以後の限られた時間の出来事だったのだろう。