どこかの会館の共用のスペースみたいなところだった。
テーブルがいくつかおいてあるが、畳敷きで休憩室のような雰囲気でもあった。
僕は一人でテーブルを使っており、もう一人女の人が別の作業をしていた。
僕たちの背後のテーブルでは、四人の男女がテーブルを囲んで何かの打ち合わせをしている。みな年配の感じだ。そのうちの一人の白髪の男性は、自分たちのテーブルにつくとき、まちがえて僕の近くの狭い通路を無理に通ろうとしたので、注意すると、気持ちよく応じてくれたので印象が良かった。
なんの話をしているのだろう。耳をすますと環境問題の話のようだ。席をはずした一人に声をかけてみると、ゲンゴロウの幼虫の生息数の減少の観点から、身近な環境問題を考える会議らしい。
参加者の一人がゲンゴロウの専門家だと聞いて、俄然僕の興奮度がたかまった。打合せの休憩中に、僕はその専門家に声をかける。
黒いセーターの小太りの人で、髪も黒く黒縁の眼鏡をかけていて、まるでゲンゴロウみたいな見た目の人だと僕は思う。
僕は夢中で、家の近所で見つけたゲンゴロウの種類を口にする。「ハイイロゲンゴロウも、シマゲンゴロウも、コシマゲンゴロウも、ウスイロシマゲンゴロウも、セスジゲンゴロウも見つけました。それからなんと、大型種のコガタノゲンゴロウも見たことがあります。このあたりにも少数生息するというネット情報の通りでした・・・」
僕は相手の反応など気にせずに、一方的に話し続けた。