大井川通信

大井川あたりの事ども

触るということ

知り合いの老人介護施設を訪ねたりしたとき、少しドキッとしてしまうのは、職員さんとお年寄りが、ごく自然に身体をふれあっているのを見たときだ。ちょっと見てはいけないようなものを見てしまったような気さえする。

これはおそらく、人間同士がふれあうことが、一般社会の中でますますタブーになっているためだと思う。僕の職場でも、セクハラやパワハラにつながるような身体接触は禁じられており、そのことで相互に監視の目を光らせていないといけない。

ところで僕自身は、身体接触が気にならない方で、つい人に握手を求めたり、懐かしい相手には平気でハグしてしまい、びっくりさせてしまったりする。ただこれは、例の「積極奇異」の行動パターンによるものかもしれない。

考えてみるまでもなく、不自由な人を手助けには、身体に触れることが不可欠だ。村瀬孝生さんも、介護とはさわることだ、と言っていた。それは物理的にさわる必要があるということだけではなく、さわることで相手への理解が深まるということを意味しているだろう。

ところで、村瀬さんは、今まで仕事で他者の身体をさわってきたから、これからは自分の身体にさわることも始めてみたい、と話していた。自分の身体をさわる、というのは実は難しい。村瀬さんはそのために、広い原野の開拓に単身で挑んでいるそうだ。

僕も、大井川歩きを通じて、自然と他者、そして自分自身をさわることを意識しようと思っている。