大井川通信

大井川あたりの事ども

ごわーん ごわーん

我が家にやってきて一年が経った九太郎は、もうすっかり大人の猫になった。体重は3.3キログラム。すいぶんと小柄な猫だ。

昨年までは熱心にやっていたフミフミも、いつのまにか全くやらなくなった。敷布団の上で、一心不乱に両手で交互にシーツを踏みつけていた姿がなつかしい。お母さんのおっぱいを求めるしぐさらしく、子猫の時期に特有のものだったのだろう。

フミフミをやらなくなるとともに、二階の僕の部屋に遊びにくることも少なくなった。かわりに、まるで忠犬ハチ公のように、妻の近くにつきまとっている。子猫の時には、そこまで抱っこされるのは好きではなかったはずだが、今では、妻に抱きかかえられたときには放心したようにリラックスしている。

妻は、近ごろは、九太郎が言葉をしゃべると真顔でいう。朝起きると、「おはよー」といっているというが、たしかにそう聞こえないこともない。

冷蔵庫を開け閉めすると、エサをもらおうとして、「ごわーん」と鳴く。これはたしかにはっきりとそう聞こえる。妻が「ご飯?」と話しかけると、「ごわーん」と答える。

猫を飼ってみて、比喩でもなんでもなく、家族の一員であり、自分の子どもと全く同じようにかわいいことに気づく。二人の子育てをした体験からいっても、そのことは断言できる。しかし、これは考えてみればとても不思議なことだ。

「にゃおーん」

気まぐれな九太郎は、この真夜中、不意にやってきて部屋のドアの外から呼びかけてくる。開けても、どうせ入らないくせに。