大井川通信

大井川あたりの事ども

介護と教育

人は生まれてからしばらくの間は、その能力を右肩上がりに向上させるために他者の助力を必要とする。これが教育であり、その専門的な支援者が教育者だ。

その期間を過ぎれば一人前となり、自己の力で能力の維持とバージョンアップを図ることができる。しかしやがて年齢を重ねるうちに能力は右肩下がりとなり、その減速と失調を支えるために他者の助力を必要とするようになる。これが介護であり、その専門的な支援者が介護職員だろう。

一般的な職業は経済活動に携わっており、その目的は利潤をあげることであり、できるだけ効率的、効果的に成果をあげることが求められる。教育と介護においては、人間そのものが目的となるから、効率や効果のみが第一に追究されることはない。人間への奉仕が仕事となるのだ。

教育の場合、その成果は教え子があたらしくできるようになったことで計ることができるし、成長後の本人自身によっても実感として評価されやすい。厳しい仕事である反面、報いられる機会も多いのだ。

一方、介護の場合、たんねんにその人のマイナスをおぎなうという作業は外部からはみえにくいし、認知症となったり死を迎えたりする本人からの評価も期待することはできない。その人らしい暮らしをできるだけ最期まで可能とするといういう仕事は、純粋の奉仕であるしかないのだ。

経験を積んだ介護職員の表情と内面を特別に深いものにしているのは、この純粋な奉仕性によるものだと思う。