大井川通信

大井川あたりの事ども

「山荘」に住む人は?

久々に休日の早朝から、大井川歩きをする。方向さえ決まればおっくうな気持ちは消えるから、電車からだと撤去されたようにも見える庚申塔の現状確認をひとまずの目的にする。

まず街道沿いの平井を通って、目的地の村山田を目指す。平井では、笠仏様や元禄時代庚申塔に寄ってから、鎮守の的原神社に参拝する。神社は里山のふところにあるが、その脇の荒れ地が整備されて、横に長い二階建てのアパートが新築されている。名前を見ると「〇〇山荘」とある。たしかに一段高い地所にあるが、街道から徒歩数分の物件に山荘と命名するのはどうだろうか。

下の田んぼをつぶしてアパートや個人向け住宅がずいぶんできているから、それなりの需要はあるのだろうが、場所的に多少不利なうえに「山荘」などと名乗ったら借り手に敬遠されてしまうのではないかと余計な心配をする。若い借り手は、お洒落で都会的なイメージを好むだろうから。

そんなことを考えながら、ちょっと殺伐としたイメージのアパートをながめていると、奇妙なことに気が付いた。アパートの手前の広い駐車場には一台の車も駐車していなくて、駐輪場にはぎっしり自転車が並んでいるのだ。

窓の様子だとすでに多くの入居者がいるにもかかわらず、駐車が一台もないなんてことは通常考えられない。それでとっさに思い当たった。ここは、外国人の労働者か留学生のための寮なのだろう。はじめからその目的であれば、山荘という無粋だが実直な命名の理由もわかる気がする。

この地方都市でも、近年、外国から来た人たちの姿をしばしば見かけるようになった。駅前にはベトナムの食料品の専門店までできている。彼ら彼女らがどこに住んでいるのか気になってはいたが、地元に新築の寮があるとは思ってもいなかった。

ところで、山荘の命名については、こんなことも考えられる。

この地域は、高い山や大きな河川、湖などがない穏やかで、ちまちまとした地形だ。雄大な自然といったら、玄界灘の外海に限られる。そのためか、小さなため池に面したアパートに「レイクサイド」と命名するというような「見立て」の才に秀でている面もある。標高100メートルの里山のふもとのアパートに山荘と命名するのもこの見立ての才によるところもあるだろう。