大井川通信

大井川あたりの事ども

恐怖と事件

北九州監禁殺人事件(事件の現場1)

大学を出て、新卒で就職した会社で、北九州に赴任した。前任者の借りていたアパートがモノレールの駅の近くにあって、そこに入居した。周囲はお寺が多い湿っぽい路地で、少し歩くとタバコ屋があり、小さな雑居ビルのようなマンションの一階に喫茶店もあった…

屋根の上の恐怖

先日来た台風で、この地域では久しぶりに強風が吹いた。そのあと数日して、何気なく見上げると家のテレビアンテナが倒れて、ワイヤーでかろうじて屋根の斜面にぶら下がっている。やれやれ。大手の電気店に聞くと、アンテナ交換になれば4万円くらいかかると…

庭の恐怖

実家の庭の隅に小さな小屋があって、その裏に回ると、隣の敷地の板塀との狭いすき間から、道の脇に立つ木製の電柱を見上げることができた。電柱の上部には、変圧器みたいなものがついていて、丸形のガイシがついていた。幼い僕には、それがバケモノの丸い目…

家庭の恐怖

妻は、実の兄との関係があまりよくなかった。それで10年ばかり会っていなかったのだが、先日、突然の訃報があった。通夜と葬儀に出て、いざ出棺の時に、手を合わせて「では、さようなら。来世は私の前に現れないでください」とお祈りして、お別れしたそうだ…

住宅街の恐怖

今の街に引っ越して、まだ間もない時だったと思う。住宅の数も少なくて、今より周辺もだいぶさみしかった。夜中、子どもを残して夫婦で車を出した。翌日の用事にそなえて、買い物とガソリンの給油に行ったと記憶している。当時3歳の長男は寝付いていたし、…

神社の恐怖

夕暮れ間近の神社の鳥居の前に、十人ほどの人だかりがある。地元のお祭りか何かなのだろう、と脇によけて鳥居をくぐると、石段がはるか上に続くのが見えた。駅や商店街からも近い街道沿いだが、この神社の山だけは開発を免れているようだ。拝殿にたどり着く…

里山の恐怖(その2)

ヒラトモ様のことは、村のお年寄りからの聞き取りと、幕末以来の文献で、薄皮をはぐようにわかってきた。それとともに恐怖の気持ちも薄らいできた。 おそらく事実はこうだ。初めは、時代のわからない武人の墓が山頂にあるだけだった。幕末に村人が盗掘のタタ…

村里の恐怖

ムツ子さんは、大井村で庄屋を務めた旧家にお嫁に来た。屋敷の裏手には、大きな銀杏の木があり、根元に扁平な大きな石が立ててある。イシボトケ様と呼ばれ、先祖の山伏をまつっているという。冬になると、銀杏はすっかり黄色い葉を落とし、それが屋敷の前の…

里山の恐怖

『荒神』には実際の山村のリアリティや怖さが描かれていないと書いた。大井川近辺での体験から、それを拾い出してみる。 もう3年以上前のことだ。半世紀前に出版された地元の郷土史家の聞き書きで、大井村の里山にヒラトモ様という神様が祀られていることを…

カラスの恐怖

通勤では、森の峠道を走るから、タヌキが車に轢かれているのによく出くわす。そのつど、タヌキの家族のことや、魂の抜けた死体がしんと静かなことが、一瞬頭をかすめたりするが、それだけのことだ。 ところが今朝は、猫の礫死体があって、その頭の半分ほどを…