大井川通信

大井川あたりの事ども

恵比須神社の遷座(せんざ)式

旧玉乃井旅館の玄関横に鎮座する恵比須神社。そのホコラの修繕と設置、鳥居の新築が終わり、ご神体を新しいホコラに移す、遷座式が行われた。玉乃井の玄関に紅白の幕を張り、祭壇を設けて、地域の神社の神主さんが祝詞がとなえ、玉ぐしが奉納される。

僕は、ホコラの修繕に関わっただけで、その設置や鳥居の新築には参加できなかった。しかし、小さなホコラ内の天井に張られた木札には、関係者として記名をしていただいた。光栄なことだ。あこがれだった宮大工の見習いをすることもできた。

村々の神社などをお参りすると、堂内に掲示された板に、建設にかかわった関係者の名前が、ずらりと墨書されていたりする。その多くはすでに故人だ。僕がこの世を去った後に、木札の名前を見つけて、思いをはせてくれる人がいるかもしれない。

こうした儀式は、現在の人々のためだけのものではないだろう。何より、過去の人々からのまなざしを受けて成り立つもののような気がする。と同時に、未来の人々のまなざしを意識した営みでもあるだろう。

遷座式は、地域のお年寄りが何名も来られていた。小さな子どもたちも、楽し気に参加していた。儀式後には、飲み物やお菓子、料理が振舞われる。様々な人々の人生が、今この場所で交錯する。

85年前、昭和9年にこのホコラが建てられたときにも、きっと同じような光景が見られたにちがいない。