大井川通信

大井川あたりの事ども

村の賢人から書を購入する

大井村の賢人原田さんを訪ねる。賢人は、日焼けして真っ黒だ。勤務している幼稚園につくった芋畑の雑草抜きが大変だという。賢人は、夏は仕事が多くなるから嫌だといいながら、実によくはたらく。

賢人が借りている田んぼには、今年もジャンボタニシが大量発生し、イネを食べてしまうから、この対応も大変だという。ジャンボタニシは、田んぼの水に浮かんでから、その浮力を利用してイネに取りつく。対策としては、田んぼの水をこまめに抜くことだが、水を抜くとこんどは雑草が生える。いたちごっこだ。

そんな中、インスタに自分の作品をこまめに発表しているのは頭がさがる。近頃は、自分の詩を書にするだけではなくて、絵を添えたり、言葉を組み合わせてそれを図案化したり、思うがままに自由に筆を運んでいる。

そのなかに、心をひかれた一枚があった。たくさんの漢字を組み合わせて、架空の村の地図を描いているのだ。山の連なりには、大小の「山」の漢字が力強く並んでいる。そのあたり「崖」も「滝」も「松」も「杉」もある。「川」の字が縦に続いて川の流れを示し、そこに横向きの「橋」がかかる。「田」「畑」「家」「道」の立て込んだ村には、小さな「人」の字があふれている。「砂浜」「港」の向こうには、「波」が連なっており、その奥に「海」が一文字、でんとひかえている。

漢字は象形文字であり、単に意味を表すだけではなく、モノたちの姿を象ったものだということに改めて気づかされる。奇をてらった感じではなく、むしろありのままの村の風物と営みを彷彿とさせるのだ。

僕は少額を払って、この書をいただいた。帰り、梅雨明けの夜空には、気持ちよいくらい星が見える。小学生の時だけ天文ファンだった僕に、今では見分けられる星座は少ない。さそり座の一等星アンタレスを見つけて、昔その赤色巨星が好きだったことを思い出す。