大井川通信

大井川あたりの事ども

神々への初詣

正月の旅行から戻って、めまいが再発するなど体調がすぐれず、正月5日になってやっと大井の神々への初詣がかなった。

和歌神社、水神様の前で黙礼して、久しぶりに里山に入る。やはり竹が倒れて道があれている。昨年から息切れ勝ちでもあるし、山の中でたおれてもいけないので、一歩ずつ踏みしめるように斜面をのぼる。

ヒラトモ様のホコラは、昨年僕がお供えした日本酒の小瓶がそのままになっている。ここ数年、僕以外が参拝している形跡はない。ホコラに舞い込んだ落ち葉を取り払い、お供えの木刀を模した木の根をきれいに並べなおす。今年は「神酒」という名のお酒をお供えする。僕は手を合わせて、ヒラトモ様にいくつかの約束をする。

里山の中腹まで降りて、細い山道で山腹を回るように歩くと、予想通り「御大典記念林」の石碑が立っている。大正四年三月とあるから、大正天皇の代替わりを記念しての植林だろう。そこを目印に人工林の尾根を下ると、ミロク様のホコラがある。

ヒラトモ様の自然石を屋根にのせた野趣あふれるホコラと違って、ミロク様は端正に加工された石造りだ。安永二年正月吉日村中と読めるから、今からほぼ250年前の1773年に大井村こぞっての建立だったのだろう。それは何のためだったのか。しかし今、このホコラの正式名称を知る村人もいないはずだ。「神酒」のお供えをしてから、山を下る。

田畑の脇の道から、里山の谷にそって進み、今度は大井炭鉱の坑口を目指す。竹や倒木にふさがれ昨年の道は使えない。山側を迂回してなんとかたどり着く。坑口をふさぐ竹を取り払って、日本酒をかけ、かつて祭られていたはずの山の神に新年のあいさつをする。

ヒラトモ様、ミロク様、大井炭鉱の山の神。3時間で大井山中の三社参りをやりとげて、ふさいでいた僕の気持ちもいくらかはれた。