大井川通信

大井川あたりの事ども

大井川歩き(空振り編)

旧大井村には、その北側に100メートル程度の里山の丘陵が連なっている。南側の50メートル程度の丘陵は、開発されて住宅で埋め尽くされており、僕の家もそこにある。北側の丘陵の峰の東の端にヒラトモ様が鎮座しており、西の端にクロスミ様のホコラがあるというのがおおまかな位置関係だ。

身近な里山だから、縦走して二つの神様をお参りしたいと思うところだが、以前一度だけ無理に道を見つけて歩きとおしたことがあるだけだ。ソーラーパネルが設置され、山がさらに荒れている現状ではどうだろうか。

大井林道を、クロスミ様の方に左折せずに直進する。ため池の脇を過ぎると、かなり大きなミカン畑となるが、大半は放置されて収穫されていない状態だ。斜面を登ると、視界が開け、駅や団地が遠くに見える。反対に駅の方からは山頂に切り開かれたミカン畑を小さく見ることができるだろう。こういう想像上の視点の交換を行うのは楽しい。

みかん畑の境界は低い崖になっていて、そこをよじ登ると、反対側の崖の下は、ピカピカのソーラーパネルが敷き詰められている。ヒラトモ様に続く里山は、このパネルの反対側だが、そこに通じる道は見当たらない。境界に沿って歩き回ったが、どこも深い藪にさえぎられている。藪の冬枯れを待って、以前のようにヒラトモ様側から突入したら抜け道を見出せるかもしれない。

今回はあきらめて、ミカン畑の斜面を戻る。作業している夫婦にあいさつしたが、会話は続かない。水を抜かれたため池の底に、ハイイロゲンゴロウがいるかと思ってしばらく眺めていたが、濁った水面に顔をのぞかせるのはカエルばかりだった。

帰りに、古民家カフェの村チャコに寄るが、原田さんは不在で、杖をついてそのまま家に戻る。鳥もミカン畑で鳴くヒヨドリくらい。こんなふうに、カラぶりみたいな大井川歩きも実際には多い。だから、小さいことでも何かあったときが嬉しいのだが。