大井川通信

大井川あたりの事ども

将棋の話

中学生棋士として連勝記録を打ち立てた藤井聡太棋士が、いよいよタイトル戦に登場して、相変わらず将棋ブームが続いているようだ。やはり、ブームにはスターというものが欠かせない。

僕が子どもの頃のスターと言えば、大山康晴十五世名人や中原誠名人であったが、同世代では、僕より一学年下の谷川浩司で、やはり中学生棋士として話題になっていた。その影響もあってか、高校一年生の時はクラスで将棋ばかり指していた記憶がある。

将棋のルールは小学生の時には覚えていて、小学校6年生のお年玉で購入した将棋盤と駒が、今でも手元にある。おもちゃ屋ではなく、駅前の金文堂という文具屋で買った記憶があるのだがどうだろうか。

高校のクラスには「名人」というあだ名の友人がいて、初めは飛車角の二枚落ちでも歯が立たなかった。やがて相手の油断に乗じて平手で勝てた時にはうれしかった。ただ、この将棋ブームはクラス替えとともに終わり、その後将棋を指すことはめったになくなった。

この分野でも実践派ではなく理論派だったので、本でいろいろな戦型や定石の基本を覚えたのだが、序盤の駒組が終わると、その後どう戦っていいのかわからない。終盤まで来ると詰将棋の要領でなりふり構わずに戦うことができる。

中盤を迎えての、無数の選択肢の中で何をやっていいかわからないという「途方にくれる」感覚は、将棋に限らず他のいろいろな分野でもあって、僕の共通の弱点の一つなのだと思う。こう考えると、確かに将棋は、人生の縮図といえるのかもしれない。

長男が小学生の頃だろうか、せがまれて将棋を指す機会がいくらかあったのだが、残念なことに子どもの将棋ブームはすぐに去ってしまった。