大井川通信

大井川あたりの事ども

長男の転職

この9月から、長男が新しい職場で働いている。昨年12月に前の仕事を辞めて、実家に戻ってから、転職に8カ月くらいかかったことになる。二月にコロナ禍が始まり、リーマンショックをこえる経済停滞といわれ、一時は緊急事態宣言で外出すらできないようになった。本人が一番にやりたかった業界は、コロナ禍の直撃を受けてにっちもさっちもいかなくなった。

ほんの数か月前は、一年をめどに何とかできたらいいねとか、半ば冗談で、ネットの商売で活路を見出したらとかいう話をしていた。あせってもしょうがないこともあったけれども、僕は、長男のことをあまり心配する気にはならなかった。子どものときから散々心配して、おせっかいを焼いてきたにもかかわらず。

前の仕事での経験談を聞いたり、求職中の家での態度をみているうちに、彼はもう大丈夫だ、僕などよりずっと上等の人間になっている、という実感がわいたのだ。僕なりに今までいろいろな人間を見てきたところからの確信だった。結果的に、その直感に基づく予感は的中した。

7月以降、前の仕事が職歴になる業界に志願書を出すようになると、続けて内定が出るようになった。今は転職市場での仲介がビジネスになっている。キャリアを活かそうと思えば、仲介業者が適切なマッチングをしてくれる。このシステムは、僕が若いころにはなかったものだ。

25歳の夏は、僕も3年で会社を辞めて実家に戻り、アルバイトニュースを見て先の見通しもなく進学塾で働き始めたときだった。今の長男よりずっと未熟で、考えのないふるまいで家族や周囲を傷つけていた。

ともあれ、人生は長いようで短い。彼のこれからに幸いが多いことを祈る。