大井川通信

大井川あたりの事ども

寺山修司の三首

詩歌を読む読書会では、課題図書の中から三作品を選び、順番にそれを披露していくことになる。他の参加者も、それについてコメントを求められるから、参加が5人でも、合計15作品について、すべて自分なりの批評を加えることになる。これにはかなり鍛えられる。その作家に対して、軸となるような理解をもっていないと、臨機応変にコメントができない。

だから作品の選定も、単に自分が気に入ったというだけではなくて、それについて何か有意義なことが語れることが条件となるし、他の参加者にとっても語りやすい、解釈に広がりがある作品であることが望ましい。

また自分の順番までの間に先に選ばれれば、候補を変えないといけないし、その場の流れで、同傾向の作品を続けたり、または雰囲気をがらりと変えたりといった配慮も必要となる。

そういう様々な配慮の中で、今回僕の選んだ三首プラス一首はこれです。

 

地下水道をいま通りゆく暗き水のなかにまぎれて叫ぶ種子あり

間引かれしゆゑに一生欠席する学校地獄のおとうとの椅子

床屋にて首剃られいるわれのため遠き倉庫に翳おとす鳥

青麦を大いなる歩で測りつつ他人の故郷を売る男あり

 

四首目は、候補に挙げながらも実際に選ばなかった作品。故郷が売られるという芝居がかった情景設定はまさに寺山ワールドだけれども、大股で歩く男の姿がどこかさっそうとしていて、湿っぽさはない。