大井川通信

大井川あたりの事ども

拳法の構え

今の職場に、空手の達人がいる。若いころから全国大会で注目を浴び、還暦を過ぎた今でも、全国組織の役員や大会の審判として全国を飛び回っているようだ。ネットで検索すると、空手雑誌で本人の特集記事を組まれたりしているから、本物だろう。

若い時からの知り合いだし、僕も武術には関心があるので、気軽に雑談をすることがある。ある時、何かの拍子で、彼に向って拳法の「構え」を見せることがあった。

すると、達人の目がキラッと光って、「いい構えだ」「いくつか直す点はあるが、基本ができている」と、ほめてくれる。

僕はうれしくなって、これは漫画の『空手バカ一代』で学んだ構えだと告白した。極真空手創始者である大山倍達の半生を追ったドキュメンタリー形式の作品は、当時の少年誌の中では劇画のようなタッチで際立っていた。ストーリーの合間に、空手や格闘技についての解説が入るのもリアルだった。

マス・オーヤマ(大山倍達)が、アメリカのプロレスラーと戦うシーンだったと思う。相手が脇をしめて内またになり、身体の中心線(正中線)を守るような構えをとった瞬間、マス・オーヤマは相手の非凡な実力を直感する。

それ以来、僕は構えるときに「正中線」を守ることを意識するようになった。達人の目に留まったのも、このポイントだと思う。

考えてみれば、僕はその後、漫画『男組』に夢中になって、そのため中国拳法を「通信教育」(当時の少年漫画の雑誌にはその広告が良く出ていた)で習い、近所の公園で型の練習をしたり、実際に剣道部に入部したりもしたから、今の僕の構えには、そのもろもろの武術経験の要素が混入しているはずだ。しかし、「正中線」への意識だけは、まぎれもなく『空手バカ一代』由来のものだと思う。

今でも僕は、自己流の正拳突きやシャドーボクシングを運動に取り入れているが、これをきっかけに、達人から正拳突きの基本を習う事ができた。われ以外皆わが師なり、を再確認。

 

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