大井川通信

大井川あたりの事ども

情報弱者の落札

正真正銘の情報弱者でありながら、ネットオークションだけは必要に迫られて利用してきた。せいぜい美術品とか古書ぐらいのものだが、「炭鉱札」(炭鉱の中だけで流通していた金券)や地元出土の鉱物を落札したこともある。

ところが入札参加の間隔がしばらく空くことが多いから、その都度うろ覚えのやり方を思い出しながら、おっかなびっくり手続きすることになる。要領が悪くて落札できず、悔しい思いをしたこともあった。

もともと元手が少ないということもあるが、僕はさほど物欲がない。美術品でも、自分が気に入ったものを求めれば切りがないが、自分に特別にゆかりのある作家で手ごろな値段のものが数点あればそれで満足だ。

今回、平野遼の好みのデッサンが出品されていて、その時点での入札価格が9千円ばかり。平野遼は僕には特に思い出のある画家なので、以前油絵を一点落札した。自在な描線が魅力のデッサンも一枚ほしいところだ。3万未満なら買ってもいいと思う。

入札の時に、2万5千円か3万円迷ったが、後者の金額を入力したのが、あとで勝負の分かれ目になった。

締切時間間際になって、ライバルが金額を釣り上げてきたのだ。おそらく彼の上限額は2万9千円だったのだろう。その時間眠っていた僕に、再度金額を上げる機会はなかったのだ。というわけで、野生の感が働き、見事落札と相成った。

しかし、次に実際の購入と入金手続がやっかいだ。案の定、クレジットカードの認証でつまずいてしまった。そこで、昨年初めて作った自分のカードの情報に変更入力すると、すんなりリカバリーできて、手続が終了する。

スマホを少し操作しただけで、入札に参加し、少額で思ってもみない品物が手に入る。情報技術の便利さに感嘆しながら、達成感を味わう「情弱」であった。