大井川通信

大井川あたりの事ども

職業能力開発校のオープンキャンパスにいく

次男は、相変わらず自宅で快適な生活を送っている。兄のあとを引き継いだ二階の個室には冷蔵庫もあるし、一階に下りれば、母親も猫二匹もいる。もともと他人とのコミュニケーションを煩わしく思うタイプだから、それで十分なのだ。

家にばかりいるわけではなく、都市部にも遊びに行くし、近隣の温泉施設にも出かける。熱い日中を避けて、日が落ちてから散歩に出たりもする。かき氷を作るのが得意で、注文のシロップを買ってくると、お店並みの上手なかき氷を出してくれる。母親の出店したハンドメイドマルシェで、サボテンとコケの盆栽を買ってきて、楽しそうに育てている。

親も家事やお使いを頼むくらいで、ほとんど好きにやらせている。手前みそだが、今回の作戦が功を奏しているのに満足している。

次男が4月に仕事を続けられない状態になって、急遽立てた作戦はこうだ。特別支援学校を卒業して6年間仕事をがんばってきた。大学に行っていれば、4年間自分のために時間を使うことができたのだ。すぐに仕事につかなくとも、しばらくリフレッシュして将来のことを考える時間をつくってあげたい。

そうはいっても、ただ次男が昼間から家にいたら、仕事を探したらと文句の一つも言いたくなるし、本人もプレッシャーを感じるだろう。だから、来年度の一年間、障害者のための職業能力開発校に通うように計画して、今年いっぱいは、親子とも先のことを心配せずに過ごすことができるようにしよう。

多少生活リズムが緩んでも、来年度の通学が「社会復帰」の準備になるし、学校の専門職スタッフのアドバイスを受けて職探しができるのは心強い。

こういう大きなメリットのために、今年度中の学校の入学手続きはきっちり踏まないといけない。6月には次男と二人で学校訪問して、本人の印象はそんなに良くなかったみたいだが(内容的に明るく楽しい学園であるわけでないので)、作戦の遂行こそが至上命題だ。今月に入っての入学願書の取り寄せや健康診断の受診なども、僕が差配したものだ。今回のオープンキャンパスの参加は、妻に学校を見せて、乗り気にさせるのが目的になる。

コンビニ風の棚の商品をピッキングする実習などもあって、次男も前回よりは前向きになってくれたようだ。妻の印象も悪くなかった。九州でも二つしかないという貴重な施設が通学できる距離にあるのは、ラッキーだと言えるだろう。例年の定員充足数を見ると、不合格になることもなさそうだ。

ただ、ちょっと気がかりなのは、これだけ利用価値のある施設への応募が少ないということだ。次男の同級生たちの顔を思い浮かべても、利用者のニーズは確実にあるはずだと思う。行政や学校が仕事の手を抜いているとは思えない。

さまざまな制度がそれぞれ良心的に運営されていながら、どこか嚙み合うことなく十全のパフォーマンスを発揮することができない。劣化する日本社会の象徴のように思えるのは杞憂だろうか。