やや日が傾いて肌寒いが、気持ちよく行事をこなしている今年のお正月は、ぜひ三が日のうちにクロスミ様のお参りも果たしておきたい。
今まで意識したことはなかったが、ヒラトモ様とクロスミ様で参拝のための「登山道」の傾きが似ていることに思い当たった。同じ丘陵上にあるのだから当然だけれども。
まず集落から山に入りダラダラとした山道が続く。ヒラトモ様の場合重機で抉ったような道で、途中から枯れた竹などでふさがれてしまっている。一方クロスミ様は舗装された林道だ。その道が尽きると傾斜のきつい山の斜面を登るのだが、クロスミさまの場合、その斜面が給水タンクやミカン畑、ソーラーパネルで開発されているために、周囲には木もない広い舗装道のきつい坂道を上ることになる。最後だけが木々の茂る荒れた山道になるが。
クロスミ様にお酒を供えて参拝する。いつものように看板の由緒の文言を朗読する。ホコラから少し離れた「展望台」の周囲が整備されて、ベンチが設置されている。
元旦に河東天満宮の高台からの眺望を味わったばかりなので、それとの比較で倍ほどの高さのあるクロスミ様からの展望はいっそう見事だ。宗像の街と背後の連山、遠くには北九州市の皿倉山から直方市の福智山にいたる山稜が見える。
大回りにはなるが、大井側の殺伐とした斜面を戻るのは気がすすまないので、用山側の森の中の正式な参道を下ることにする。こちらは整備が行き届いているがかなりの急傾斜で足がとられないように気をつける。整備によって道幅は確保されたが、かえって滑りやすくなった部分がある。
二か所の遥拝所にもお参りして、用山の集落に出る。阿弥陀堂にだけお参りして帰るつもりがふと大井ダムの様子が気になった。年末に街中で見かけたヘラサギの群れが今年もいるのではないか。
ダムに沿った道を歩くと、数年前に見かけた浅瀬の部分に、やはりいた。数えると11羽が、フラミンゴのように片足立ちしたり、ヘラのような嘴を背中に持たせたりしながら、思い思いのポーズで休んでいる。アオサギが一羽何食わぬ顔をして交っているが、僕の姿を認めるとアオサギだけが神経質に羽ばたいて位置をかえる。ヘラサギたちは無頓着だ。周囲にはカモの群れもいる。
ヘラサギは目の部分と黒い嘴は短い線でつながっているだけだ。しかし顔の部分が黒い面になっていて目がその中に埋もれている(つまり黒面だ)クロツラヘラサギが11羽の内2羽紛れ込んでいることが双眼鏡でみてわかった。区別は難しいが、顔の表情はまったく違うから間違いないと思う。
大井に戻って焼酎を持参して、原田さんのギャラリーで新年会をする。二時間ばかり、僕はお茶だけだ。年末に体調を崩した原田さんは珍しく元気がなく、やや弱気な発言をしていた。正月に遊びに来た酔客たちとの会話に消耗してしまったということのようだ。今後の聞き取りの計画を話し、カトリックの司祭押田成人さんの思い出などを聞く。