大井川通信

大井川あたりの事ども

虫のいろいろ

クマゼミの羽化

今月に入ってから、庭の周辺で見つけたセミの抜け殻を一カ所に集めている。手の届かないケヤキの枝の先に見つけたものも含めると、今日までで20個になった。そのうち19個は明らかにクマゼミで、一つはおそらくアブラゼミだろう。 二日前の夕方、庭の花壇の近…

カミキリムシの話

黒光りする硬い甲羅におおわれた甲虫は、昆虫少年のあこがれの的だ。カブトムシやクワガタムシ。水中ではゲンゴロウ族。ただし、どこにでもいて、戦闘力のないコガネムシやカナブンの仲間には魅力が感じられないのは、仕方のないことだろう。 それでは、カミ…

僕はニイニイゼミすら聞き分けていなかった

夕方、家の周辺を歩く。いろいろ反省することしきり。 まずは、先日ヒメハルゼミの調査と称して、近隣の神社を車で回ったこと。家の近所をたんねんに歩き回れば、ちょっとした鎮守の森程度の林はあちこちに見つかるのだ。そこを調べるのが、やはり大井川歩き…

ヒメハルゼミの研究(その4)

梅雨なのに今日も晴れ。まだ明るい午後7時に家を出て、徒歩で目的の場所に向かう。やはり大井川歩きの基本は徒歩でないと。村で常緑広葉樹の林が残っているのは、鎮守の森以外では、かつての墓山だろう。今では大井区の納骨堂が造られているが、その背後の高…

ヒメハルゼミの研究(その3)

今日は快晴に近いから、夕方でも明るい。午後6時半近くに和歌神社へ向かうため、秀円寺裏の林の道を下りていると、遠くからヒメハルゼミの合唱が聞こえる。しかし近づくと、鳴き止んでいた。再び鳴き始めたのは6時50分。曇りの夕方より本格的な鳴き始めは遅…

ヒメハルゼミの研究(その2)

仕事が終わってから、近隣では最大の鎮守の森がある宗像大社へ。午後6時を過ぎて人気のない境内を歩く。うっそうとした大木の並ぶ小道を歩いて、小山の上の祭祀場に向かう。奥の森からヒメハルゼミの鳴く声が小さく聞こえてくるが、アクセス可能な場所にはセ…

ヒメハルゼミの研究

午後5時過ぎに家を出て、歩いて5分ばかりの和歌神社にむかう。今日は曇っているので、すでに夕方らしい時刻だが、神社の境内にセミの声はない。いったん家に戻ろうとすると、突然裏の林からセミの合唱が始まる。5時30分頃だ。しばらく聞いてから家に戻り、帰…

ヒメハルゼミの合唱

数年前、職場近くの松林で、ハルゼミの存在に気づいて、驚いた。セミは、もっとも身近な昆虫であり、今さら新しい発見などないと思い込んでいたからだ。もっとも、ハルゼミは松林の中でなら、それほど珍しいセミではないのかもしれない。5月に奈良に行ったと…

ビワとカマキリ

以前に妻が、知り合いからビワの葉のエキスをもらってきて、それが市販の塗り薬よりもよく効くと話していた。それで自分で作りたいからビワの葉を見つけてほしいというので探すと、意外と身近なところにビワがあることに気づいた。近所のため池の縁にも、雑…

ゴマダラカミキリとケヤキの木

昼間、玄関の脇の地面に、ゴマダラカミキリが歩いている。今年も、そんな季節になったか。小ぶりの身体だが触覚が長く、見映えのするスタイルだ。黒地に白の斑点模様で、青みがかった光沢のウエットスーツを着込んだような姿だ。甲虫で美しさを感じるのは、…

黄脚毒蛾の乱舞

武蔵野に立地する某メーカーの研究所の敷地は、鬱蒼とした森になっている。周囲の開発から取り残されたブラックボックスみたいだ。 朝、敷地の塀に沿って歩いていると、モンシロチョウの姿が目立つ。しかし、どこか違和感がある。 モンシロチョウにしては、…

タカラダニとナミテントウ

家の垣根のレッドロビンがところどころ虫害で枯れてしまったので、思い切って抜いてしまって、擬木のフェンスを立ててもらった。枯れてない木も伸び放題だったので、庭がだいぶ明るく、広くなったように感じられる。 レッドロビンの垣根については、家族のも…

クモの話

クモが特別に苦手だという人がいる。以前同僚だった人は、一センチに満たない小さなクモにも逃げ回っていた。子どもの頃好きだった時代劇『素浪人花山大吉』(1969-1970)の中の人気キャラクター渡世人「焼津の半次」もクモが苦手だった。 昆虫好きだった僕…

ぼろぼろのイシガケチョウ

虫たちには厳しい季節がやってきた。林のジョロウグモの数もみるみる減って、主人のいなくなった巣を見かけるようになった。 自宅のカーポートの白い柱の根元に、見慣れない蝶か蛾のようなものが止まっている。止まっている、というか貼りついている。蝶か蛾…

寒風にゆれる女郎蜘蛛

以前、電灯近くのジョロウグモの巣に、一面コバエのような小さな虫がくっついているのを見たことがあった。明かりに集まったコバエが捕まってしまったのだろう。しかしこれでは、巣の存在が一目瞭然だ。すると主であるジョロウグモが、その一つ一つを口でく…

ジョウビタキとカトリヤンマ

夕方、夫婦で久しぶりに散歩をする。妻が、和歌神社にお礼参りにいくというので付き合ったのだ。前回、心配でお願いしていた検査結果が良かったから、スーパーで買った日本酒の小瓶をお供えするらしい。和歌神社の社殿の前でふたりそろってお参りしたが、妻…

天邪鬼と女郎蜘蛛

ポーの短編小説のなかに、「天邪鬼」(the perverse)を人間の本質とみる視点があることを書いた。われわれは、そうしてはいけないから、かえってそれをしてしまうのだ。ポーは小動物をいじめてしまうことを、その実例にあげている。 僕も自然観察者を気取り…

カメムシの侵入

庭のケヤキの木には、だいぶ以前から、毎年小さなカメムシが発生する。緑色ではなく、グレーの体で、幼虫の姿は、宇宙人のようにつるっとしている。我が家では見慣れた種類なのだが、手元の図鑑にはのっていない。 今頃の季節には、冬越しのために家に侵入し…

光速の竜とアサギマダラ

新幹線のホームに、南からやってきたN700系が停車している。例の恐竜のような長い鼻先を突き出して。 ふと架線の上に目をやると、ヒラヒラと飛ぶ蝶が目につく。白地に黒いシマの羽に、紅のアクセントが目をひく。南下の長い長い旅の途中のアサギマダラだ。 …

脱力系のカトリヤンマ

日の射さない林の中を、大柄のトンボが飛んでいる。見た目はヤンマのようだが、ハグロトンボみたいに、はかなげに羽をばたつかせて飛ぶ。みしみしと大男が歩くようなオニヤンマの力強さや、高速ギンヤンマの自由自在な飛行とは比べるべくもない。 近くの枝に…

ナガサキアゲハの幻惑

黒いアゲハが優雅に飛ぶ姿には目を奪われるが、残念ながら種類を見分けることができない、と以前に書いた。カモ類の識別ができないのと同じで、見かけがどれも似ているのだ。しかし、いつまでそんなことではすまされまいと、わかりやすい特徴から頭に入れて…

セミの死によう

生き様(ざま)という言葉はよく使われるけれども自分は嫌いだ、という誰かの文章を読んだことがある。たしかに、力みかえった誇張が感じられるし、音の響きもうつくしくはない。同じ漢字でも、「生きよう」と読んだ方が、やさしく、軽い語感となる。 ここで…

ツクツクホウシの聞きなし

以前にも書いたが、僕の特技の中に、ツクツクホウシの鳴きまねができるというのがある。小学校のある夏の自由研究で、ツクツクホウシの鳴き方の調査をしたために、すっかり身についてしまったのだ。 ある時、得意になって鳴きまねを披露しているときに、誰か…

『虫のいろいろ』 尾崎一雄 1948

最近、ようやく虫のカテゴリーを立ち上げて、名前を「虫のいろいろ」にしたので、本家の小説を手にとってみた。短編だが、一部分は読んだ記憶がある。試験問題や副読本で部分的に読んだことがあったのだろうか。 ところで、有名な作品だが、あまり良くなかっ…

アオスジアゲハの羽ばたき

黒いアゲハの大きくて悠然と飛ぶ姿は、優美でドキッとさせられる。しかし、それがクロアゲハなのか、カラスアゲハなのか、はたまたナガサキアゲハなのか、さっぱり特定できない。実物の特徴を頭に入れて、あとで図鑑で確かめることもあるのだが、すっきりと…

サラダと尺取虫

海が見えるイタリアンのお店に、夫婦でランチを食べに行く。正直な話、そんなことはめったにない、いやそれどころか記憶にすらない。二階に上がると、眼下は砂浜で、視界いっぱいに海が広がっている。建物はかなり古びているが、海に向かうカウンター席に並…

お宝映像!

ゴミ出しから戻ってきた妻が、玄関で「お宝映像!お宝映像!」と声をあげる。出勤前で忙しかったけれど、笑顔に誘われて道に出ると、ゴミ捨て場の網に、タマムシがしがみついていた。光沢のある緑色の身体が美しい。自宅前で見かけることはめったにないから…

君はハルゼミを知っているか

セミは、郊外育ちの昆虫好きの元少年にとって、一番身近な長年の友人である。だから、セミに関するネタは山ほどある。 昔の東京では、アブラゼミが主力だったが、今ではミンミンゼミも平気で街中で鳴くこと。西日本では、クマゼミの天下だが、生息域が東京に…

ゲンゴロウの狡知

ほとんどの水生昆虫は、空気中から酸素をとりいれて呼吸している。水中に身をひそめているゲンゴロウも、頻繁に水面に上がってきて、素早くおしりを水面に突き出し「息つぎ」の仕草を見せる。 面白いのは、空気をため込む場所である。固い前羽と背中の間にす…

ゲンゴロウの躍動

ゲンゴロウというと、開発によって生息できる環境が少なくなり絶滅寸前になったひ弱な昆虫、というイメージがあるかもしれない。しかし、ハイイロゲンゴロウだけは、別の種と思えるほどのたくましさがある。 まず、その泳ぎ方だ。舵の壊れた暴走モーターボー…