2014年に新装復刊された詩集を購入した。学生時代、詩をよく読んでいた頃に活躍していた詩人だから、名前くらいは知っていた。
ひとりでごはんを食べていると/うしろで何か落ちるでしょ/ふりむくと/また何か落ちるでしょ
ちょっと落ちて/どんどん落ちて/壁が落ちて 柱が落ちて/ひとりでに折り重なって/最後に ゆっくり/ぜんたいが落ちるでしょ
手を洗っていると/膝が落ちて 肩が落ちて/なんだかするっとぬけるでしょ
ひとりでごはんを食べていると/うしろで何か落ちるでしょ (「うしろで何か」)
半年ばかり前に読んだときには、22篇中、7篇に付せんを貼っていた。今回読み直してみて、ざっと△が6篇、〇が10篇になった。7割超えの驚異の「高打率」である。とくに、前回ノーマークの作品で、今回いきなり〇評価となったのが、5篇もあったのは驚きだった。
経験上、現代詩は、一読して何かのひっかかりがないと、再読したからといって面白みを見つけることはまずない、と思っていた。そうばかりではないと気づかされる。
このところ詩を集中的に読んで、言葉への感度が少しは良くなったのかもしれない。それ以上に、詩人の言葉がみずみずしくて、ゆっくりつまみ上げると、果汁がポタポタしたたりおちるくらいの鮮度をたもっているからだろう。
やわらかな言葉が、ここちいいリズムで、日常の不思議を押しひろげるような作品がそろっている。素敵な詩集に出会えたことを、喜びたい。