大井川通信

大井川あたりの事ども

ヒラトモ様発見6周年

里山のてっぺんにヒラトモ様のほこらを発見して、今日で6年がたった。

郷土の伝説の聞き書きの古い本に、平和様という不思議な当て字(誤字)で紹介されているだけの神様が、実際に残されているかどうかは、半信半疑だった。大井を囲む里山のうち街側の半分は切り崩されて住宅街になっている。おそらくその開発の犠牲になっているのではないか。

土地の人の証言をたよりに、荒れた山の斜面の上の雑木林で、自然石を屋根にしたホコラに木の根が大量にお供えされている異様な姿を発見したときは、どぎもを抜かれた。その後、断片的な郷土史の資料と実際の聞き取りとを組み合わせて、日本の近代化に翻弄されたこの小さな神様の数奇な運命が浮かび上がったときには、実際の発見にもまして驚かされた。

あれから、思わず声をあげるような発見はいくつもあった。

村の小さな炭鉱跡と、宇部興産との意外な関係。今に残る坑口の発見。

山中のミロク様の発見と、弥勒信仰の系譜。秀円寺とのつながり。

戦前の弾圧前の大本教にかかわりのある神社の存在の謎。

大井始まった山伏の伝承と、十力という地名の謎解き。

水神さまの神木の台風による倒木と山伏の銀杏の伐採。それに続く祟り。

和歌神社の鎮守の杜に生息するヒメハルゼミの大合唱。

しかし、地元を歩き回ることの面白さと、徒歩圏内に埋もれた宝の存在を教えてくれたのは、なんといってもヒラトモ様だ。

ヒラトモ様の物語だけは埋もれさせてはいけないと、その責務が僕にはあると、今も思う。