大井川通信

大井川あたりの事ども

クロスミ様、出番です

大井の隣村の用山(モチヤマ)には、黒尊(クロスミ)様と呼ばれる謎のホコラが祭られている。江戸時代末に、伝染病を抑えるのに力を発揮したと伝えれる伝説の神様だ。遠い昔話だと思っていたが、この時節なので、お参りにあがる。

前にお参りしたときには、少し荒れた印象だったが、今日はホコラの掃除も行き届いていて、ホコラの前の林には、新しく青竹でベンチが作られている。用山の人たちも、黒尊様のご利益をあらためて思い出したにちがいない。

僕は、案内板に書かれた由来書を、大声で二回繰り返し読み上げて、祈りをささげた。無人の山頂の林に響き渡る言葉は、クロスミ様の耳には届いただろうか。なにしろ170年ぶりの出番になるのだから。

 

「昔用山に不幸が続くために弘化四年(西暦1847年)中国より神を招き祈願したるところ平和が蘇り永遠に村の平和を願って山上にその神を祭る。黒尊様という」

 

参拝の帰り、竹の杖をついて大井川沿いに歩いていると、農作業から帰ってくるハセガワさんに出会った。大井炭坑の聞き取りでお世話になったハセガワさんは、今年大井の区長をするという。ハセガワさんと別れると、今度は前の前の区長だったリキマルさんに会う。リキマルさんは「大井始まった山伏」の話を教えてくれたムツコさんの息子さんだ。

二人には、僕が山中のクロスミ様へ参拝してきたことを話す。この時節だから、と言う話が通用するのも、彼らの世代までかもしれない。

 

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